日光東照宮「旅枕」(4)
宿の女将さんの勧めで買い求めた冊子『日光山小誌 全』を手にした清サンは、感激した。何かお宝が授かったような気持ちになった。これさえあれば、日光が全部解かる気がした。「少し値が張ったが思い切って買った甲斐があった。」と清サンは思った。
表紙をめくると、錦石秋先生編輯日光山小誌金魁堂蔵版とある。
一頁づつ実に丁寧に書かれている。おそらく銅画であろうか、画は写真と見まごう程細かく描かれている。下図、長政の大鳥居の画がそれである。
最後の頁には次のように書かれている。
神橋より各所への里程
○東照宮七町
○二荒山(ふたらやま)神社九町○霊屋(れいや)十町○瀧尾社十八町
○霧降瀧(きりふりのたき)一里半○含満(がんまん)十三町
○寂光(じゃくこう)一里○裏見瀧一里余○清瀧一里十四町
○馬返し一里三十町○中宮祠旧中禅寺三里十二町余
○湯元六里○細尾村二里○足尾六里○古峯原(こぶがはら)六里十五町
○今市二里
○宇都宮九里余○鹿沼七里余
○栃木十三里余○東京三十六里余○大田原十三里
○信州善光寺五十四里余
※一里≒4㌔、1町(丁)≒0.1㌔
明治20年6月15日 出版御届 同9月 出版
偏輯人(へんしゅうにん) 錦 石秋(にしきせきしゅう)
磐城国(いわきのくに)伊具郡角田東町326番地
出版人 鬼平 金四郎 下野国上都賀郡日光鉢石353番地
東京銅鈑工 細井松夫門人合判
※鬼平金四郎は前号の「日光諸社案内(畧)記」の発行者でもある。
つづく
次号は仙台~塩釜神社を訪れます。
『錦石秋』をブログで開くと早稲田大学図書館の
「古典籍総合データベース」がでる。六冊の蔵書があり、その上段の一冊に
同じ≪日光山小誌≫があり『出版地不明』となっている。気になりました。
因(ちな)みに同図書館に、清サンの叔父・郷純造が大隈重信に宛てた書翰、100余通が保存されている。その中の一通に『秩禄処分』がある。(明治十年九月九日)
山川出版社「史料を読み解く(4)」―幕末・維新の政治と社会―
鈴木 淳、西川 誠、松沢 裕作 編集
こに詳しく語訳付きで出ており、時の大蔵卿(今の財務大臣)に堂々と“建白”をしています。興味のある方は一度ご覧ください。
早稲田大学図書館はこちら
その他清サンが買い求めた鳥瞰図の詳細を記しておきます。
★イ.日光二荒山(カラー) 明治14年4月13日 御届(下写真)
・出版人 小林次郎 栃木県下日光町508番地
・製造人 荒川藤兵衛 東京馬喰町2丁目9番地
・画工 長谷川勘之助 東京湯島天神下同明町18番地
★ロ.大日本日光名所一覧 明治23年3月13日 印刷並出版(下写真)
・著作兼発行人 井上茂兵衛 日本橋区馬喰町3丁目19番地
・発売所 小林次郎 栃木県下野国日光本町2丁目
★ハ.大日本日光山一覧ノ図(カラー) 明治29年2月13日発行(下写真)
・印刷兼発行者 井上茂兵衛 東京馬喰町3丁目
・大販売 大島敬三郎 日光御幸町
東洋ノ美術 光陽堂(包帯付き)
★二.大日本日光山名所之図(カラー) 明治30年 発行(下写真)
・印刷兼発行所 宮部商店 栃木県上都賀郡日光町
・印刷人 金子勘蔵 東京市浅草区高原町16番地
★ホ.日光山全図(カラー)明治41年3月1日(下写真)
・井上茂兵衛 日本橋区馬喰町3丁目
・薫州周春(くんしゅうちかはる)筆(版画)
★ヘ.改正日光両社名所全図 明治41年4月15日(540×390)出版御届
写真はこちら>>(ページ下段)
・著作兼発行者 山田長吉 東京市神田区仲町2丁目5番地
・印刷所 山田盛進堂 仝 市本郷区湯島5丁目9番地
・売捌所 松阪屋兄弟商会 栃木県日光町仲鉢石271番地
(カラー包帯付き)
※ハ~ヘは明治40年代後半に再訪の折り買い求めたものである。